時間は人を変える。
それが成長であるかもしれないし、退化であるかもしれない。
一緒に過ごしていない時間の分だけ、相手は知らない自分になってしまうのだ。

最後まで話を聞き終えた定は、静かに長く息を吐いた。

「お前もついに知っちまったか……」
「何だよ、お前知ってたのかよ!」
「知ってたも何も、俺もその現場に居合わせてたんだよ」

定もあの事故に……?
俺は立ち上がった。テーブルの上のコップに注がれた水が揺れる。

「頼む! あの事故の事、もっと詳しく教えてくれよ!」

定は「まあ落ち着け」と言って、俺の肩を掴むと俺を座らせた。

「今は仕事中だから無理。明日の朝10時、ロビーに来い。分かったな?」

定はそう言って、その場を去った。