何もする気が起きなかった。 涙を止める気すら起きず、俺は子供のように泣きじゃくり予約していたホテルへと向かった。 フロントの受付嬢と適当にやり取りをして、部屋に入るとそのままベッドの上になだれ込んだ。 未だ涙が止まる様子はなかった。 手の甲で目元の涙を拭ってみても、またすぐに新しい雫が落ちてくる。 俺は記憶を失くしたあいつを、まだ愛せるのかな……。 部屋の真っ白な天井をぼんやりと眺めた。 寿々歌の記憶を消し去ったように、誰か俺の記憶も真っ白に消し去ってくれれば良いのに……。