例えるならば、"彼"は黒だった。


黒い髪、黒い瞳、黒い服


なにより雰囲気も濃くて重く、彼女と同じでこの世界に対し異物だ。




誰?




心の中で再び沸き起こる疑問を唱えれば"彼"は唇を孤にして「質問が多いですね」と薄く囁いた。



どうやら自分の心の声は彼に届くらしい。



伝わらない言葉の理解者が現れたことに安堵した彼女は、ようやく自らの感情の波が蘇り自我が目覚めた。



動きたい。


なんで私はこんなとこで寝ているの?


その欲求に応え無理矢理全身に力を込める。すると今まで余裕に満ちた薄笑いを浮かべていた彼の表情が崩れた。



「今の状態では無知も仕方がないですが…何も知らない恐怖から自暴自棄になられても困ります」