家の扉の横でちょこんと座りながら寝ているのか気絶しているのか分からない男が一人いや、アタシの記憶上一匹と例える方が正しいかも知れない。


一年以上見ていなくてもハッキリ分かってしまう人物がすぐそこに、初めて出逢った時と同じようにアタシの目の前にいる。


どうすればいいのか分からない、でも心臓の速さは格段に上がり、さっきまで歩くのも面倒くさいと思っていた思いは遠くの彼方へと消えていた。


アタシは平然を装い鍵を鞄から出して鍵穴に差し込もうとした。


「待ってたよ、涼子」


この声を聞くまで。


そのセリフはアタシの方だ!