「巻き込まれる前に処置したかったのだがね」

「助けてくれただけでも有り難いよ」

 アザムの言葉に笑みを返し足を組んでコーヒーを傾け、向かいのソファに座っている少年に目を移した。

「サム」

「! な、なに?」

「現実に見る限り、どうだったかね」

「!?」

 静かに問いかけられ、戸惑ったあと顔を伏せる。

「すごく……怖かった」

「流される血には理由がある。決して痛みだけではない」

「うん……」

「それが解れば良い」

 言って笑みを浮かべると、少年も引きつった笑顔を返した。