「あ、父ちゃん……いま? いまえーと……アザムって人のところ。なんでって……ベリルに会わせてもらおうと……うるさいなぁ! 怒鳴らなくても聞こえてるよ」

 ちらちらとアザムに視線を送りながら会話を続ける。

「やだ! 会うまで帰らない」

 眉を吊り上げて頬を膨らませた。

 そして、携帯をぶっきらぼうに差し出す。

「!」

 電話に出ろという事なのだろうか? 目で確認して、耳に当てる。

「はい」

<アザム君だね。父のロメオだ。サムが世話をかけたようですまない>

「いいえ」

 落ち着いた感じの、40代ほどに感じられる男性の声がすまなそうに続ける。