アザムは手早く着替えた。

 厚手のパンツと半袖シャツにデニム生地のベストを合わせた恰好だ。

「……」

 デスクの引き出しを開けてナイフを手にし、ハンドガンを見つめしばらく考えて黒い塊を持ち上げた。

 実際の重量よりも重みを感じるそれを握る。

 過去にも見ていたハズの彼の闘い──あの時とは異なる感情が芽生えていた。

 優雅で流れるように敵を確実に仕留める姿のその中にある優しさが、見て取るように理解できた。

 本当なら全員をひと突きで殺す事が出来たのに、彼はそうしなかった。

 瀕死にする事も出来ただろうに、それさえもしなかった。