ナイトメア・ホルスター

 しかし、ナイフは虚しく青年の横をかすめた。

 その刃を一瞥した青年が口の端を吊り上げると、男は言いしれぬ恐怖に冷や汗を垂らす。

 自分たちよりも小柄な青年に手も足も出ない。

 1人残った男は、自分が勝てるとは到底、思えず腰が引けている。

 こちらが攻撃をしかければ必ず反応する……男は肩で息をしていた。

「……」

 ああ、ベリルだ……アザムは青年の姿に目を細める。

 自分を守るために闘った光景は、今でも心に強く刻みつけられている。

 誰よりも強く美しく、その眼差しは鋭く全てを射抜くようだった。

 どこかしら幻想的に映し出される目前の闘い──

「う、うわあー!」

 ベリルは、逃げずにナイフを突きだしてきた男を賞賛するように笑みを浮かべると、突き出された手首を掴まず男の肘に手を伸ばす。