ある日──ロメオの家の地下にある仕事部屋に通され、書棚に並べられた大量の資料と書籍にアザムは呆然とした。

「ベリルには要請や依頼の他に、試作品のテストなんかもよく来るんだ」

「死なないから、とんでもない物も送られたりすると聞いた事があります」

「あっはっはっ! β(ベータ)版ならまだマシなんだが、時々α(アルファ)版をよこしてくる奴がいるらしいからな」

 それを聞いたロメオが高らかに笑いながら応えた。

「困ったものですね」

「まあな。それでもベリルはちゃんと報告してやってるよ。律儀というかなんというか……安全なものを提供したいっていうのは開発者も同じだからな」

 そして書棚にあるファイルを1つ取り出し、少年に手渡す。