「なんなのアイツ!?」
ボフっと大きなベッドに倒れ込みながらセレーネは叫ぶ
「腹立つったらない!子供で何が悪い?アンタだってガキだろ!」
悔しそうにベッドの上で手足をばたつかせるセレーネ
苦笑しながらその様子を見守る者がいた
「そんなにひどかったんですの?」
「セレーネ、言葉使いが悪いぞ……」
悪態をついているセレーネに軽く嗜めるのはアルテミスのシスターであるミリアと近衛騎士のヒースであった
彼らは神官であるセレーネの側仕えとしてアルテミスからついて来たのだ
慣れない土地に滞在するのだ、気心の知れている二人の前ではセレーネも気負わなくていい
「ああ、酷かった。いきなり嫌味合戦だったよ」
「お前も言い返したんだな……」
呆れるヒースにセレーネはニッと笑って見せた
「当たり前。それに言葉使いも荒い方が分からなくなるだろう?」
頭の高い位置で結われた髪をセレーネはくしゃりと解く
滑り落ちる艶めく漆黒の髪
癖のない髪はしっとりと光りを弾いている
クスリと笑いながらセレーネは言う
「僕が本当は女だってこと」


