あたしのことを調べてたと言っていた飛翔くん。
気になって、好きになって、地元も同じようなもんだし、簡単に調べることができたと。
「16で子供を産んでた流奈はすぐに情報が入って来たよ」
「うん」
「だけど、子供なんて関係ないと思った……好きになった女の子供だからさ」
そう話してくれた飛翔くんはさっきの怖い顔をして飛翔くんではなくて柔らかい表情をしている。
「でもよ……」
はぁ~と大きなため息をついたかと思えば
「結婚しているって聞いたときはさ、マジでへこんだ……こんにも今まで生きて来た中でショックだったことなんて、ないって位にな」
そう一点を見つめながら話す飛翔くん。
「ごめんね」
「彼氏ならどうにかなるかなって、流奈と出逢った時に思ったんだ」
「ごめん……」
「流奈に彼氏がいないってわけねぇ~と思ったし、飲み屋じゃお約束だろ?」
「うん」
「でも旦那ってよ……!!」
大きな声を出して、ハンドルを叩きながら顔を伏せた飛翔くんを見て、あたしはもう『ごめんね』と謝ることさえできなかった。
その姿を見れば、あたしよりも何倍も何十倍も飛翔くんは苦しんでいて
結局あたしは、自分が傷つくことに脅え
久々に手に入れた沢山の感情に酔いしれなければ……
あの日、あたしが飛翔くんの席につかなかったら
あたしが名刺なんて渡さなければ
帰りに電話なんかに出なければ
いや、違うんだ
あたしが、飛翔くんを好きにならなければ良かったんだ……



