“会いたい……”


更衣室に戻れば再び、一瞬でつばさくんへと思考が戻されてしまう。



すぐに携帯を開けば《今終わったよぉ~!つばさクンは寝てる?》なんて、お客さんへのお礼の前にすぐさま携帯に文章を打ち込んでいく。


「アフターでも行くの?」


そんなあたしの姿が物珍しいかのように、千秋に突っ込まれた。


「いや、行かないよ」


「ふ~ん」


ニヤリと笑ったその顔を見て、やっぱりあたしは普通じゃないんだと実感してしまう。



視線を気にしながら平然を装ってみるものの、明らかにニヤついている千秋に「なに?」なんて冷たく返してしまう自分がいて、携帯を閉じるとそそくさと着替えを始めた。



「お疲れさま」


「え?帰るの?」


「今日ちと、送りで帰るよ」


「分かった」


そう言いながら、千秋が店の方に戻っていく姿を確認して再び携帯を開けば《お疲れ!俺はまだ外!!もう帰るよ!》なんてメールが入っていて


何処かですれ違うかもしれない!!


そう思いながら、ささっと着替えを済まして、少しだけ化粧直しをすると、店を飛び出した。




会えなくたって、近くにいるかもしれない。


そんな想いだけで、嬉しくなっている自分がいる。



この時間、どこかで繋がれてているということ。



それだけで、ドキドキしている自分がいる。



車のエンジンをかけ、バッグからタバコを取り出せば、残りの1本だったタバコを咥え車を走らせた。



さっき会っていたパチンコ屋の前を通った瞬間胸が苦しくなる



『行かせたくねぇよ』


あの場所で言われた言葉があたしを苦しくさせる。



目をつぶり大きく深呼吸すると、振り返らずアクセルを強く踏んだ。