あたしから塞いだ飛翔くんの唇が温かすぎて、頬に涙が伝う



求めていたぬくもりと温度が全身を駆け巡ってドキドキさせる……


「流奈を愛しすぎちまったよ」


だけど、その言葉はなぜかとても切なくて悲しい


本当なら心から喜べることなのに、飛ぶ翔くんの苦しみが先に伝わってきてしまうんだ。


“流奈もだよ”そう言ってしまいそうにもなったが、それを呑み込み平然を装いながら「へへっ」と笑うのが精いっぱいだった。


緑色に光っているデジタル時計が、視界に入ってしまう事に不快を感じながらも、それに目が行ってしまう自分が心底イヤになる時がある。



「そぉ~いやぁさ、今日発売のCD全部聞いた?」


「もちろんっ!!」


いつもあたし達の間に流れているアーティストの曲。


離れている時にだって、かけ続けている曲。


「約束、覚えてる?」


「覚えてるよぉ!!」



「じゃぁ、いっせいのせっ!で言い合おうよ!!」


飛翔くんがあたしから離れ、得意げに言う顔を見ながら、あたしは心から幸せだと感じた。




そう、あの時の約束も、もう一度こうして再び手を取り合わなかったら叶えることなどなかったのだろう。


「よし、いいよ?」


あたしも勝ち誇りながら、飛翔くんに向かって舌を出しながら憎たらしそうに笑って見せた。