「俺、色々、考えたんだけど」
飛翔くんの声が聞こえてきたのに、その言葉が凄く重くて聞くことを拒否してしまいそうになる。
今、あたしは飛翔くんに“さようなら”と告げられてしまえば取り乱してしまうだろう。
“今までありがとう”とか“元気でね”とか、そんなこと言えるほどの平常心を保つことすら無理に違いない。
ふと、千夏の方に視線を送るとため息交じりに「うん」と呟いた。
その呟きに返答はなく、また大きな深呼吸が聞こえてくる
「流奈が好きでしょうがねぇ~んだよ」
「うん」
ん? うん……!?
えっ……??
止まっていた……
その言葉になんて返そうとしているのかさえ分からないほどで
あたしの周りの時間が止められている
「だけど、不安で、好きだからどうしようもなく不安で」
「流奈がいつか、俺の傍から離れて行くと思うと恐くて」
次々と発してくる飛翔くんの言葉は、あたしの胸をふるわす……
だったら、どうして……
どうして……
嬉しいはずの言葉たちが疑問に変わっていく
飛翔くんが不安をいつも抱えていることも、恐怖に脅えていることも知っていた。
だけど、好きなもの同士離れることほど辛いものはないんじゃないか?っていつもそう話していた。
なのに……
飛翔くんは、辛いからあたしの傍から離れようとした?
一緒にいる辛さよりも、不安に負けた?
「流奈の言うとおり、俺は逃げようとした」
「なんで?」
その言葉を返すのに時間などかからなかった。



