なんだかんだ言って、飛翔くんがいない世界でもあたしはこうして生きている。


どんなに悲しみ苦しんでいたって夜は勝手に明けていて、また新しい一日を勝手に迎えてくれる



忘れたくないという想いと忘れてしまいたいと想いを天秤にかけてしまえば、間違いなく忘れたいという想いが一瞬にして勝ってしまうのだけど


きっと、この想いを消しさることは不可能に近いことくらい自分が分かっているから辛くなる。



「ママそこにいてね~あそんでくる~!!」


「うんっ♪」



公園に着くなりはしゃぎ回っている、千夏を見ていると、自然と自分の顔が緩んでいくのが分かる


そしてあたしはこの平凡な生活の何が不満なのかなんて思ってしまう。



守らなくてはいけないものが目の前にあるはずなのに、あたしは大事なものを2つも抱えようとしていて、きっと贅沢なのだろう。



久々におもいきり吸い込んだ空気は気持ちよくて、こんなのも悪くないんじゃないかな?なんて思ったりもするのに



すぐに、脳裏に横切ってしまうのはあの時あたしに言い放った冷たい言葉と悲しげな表情





もしかしたら全てが夢だったと思わせるくらいに、現実と夢の狭間で朦朧としている気がしているのは飛翔くんがいきなりあたしの傍から消えてしまったからなのだろうか



一体、どっちが夢なのか分からなくなるような錯覚を起こす。



それでも、鳴らない携帯を見ればあたしの傍から飛翔くんがいなくなってしまったことが現実なのだろうと思い知らされてしまうのだけど……