「トイレ行ってくる……」


笑顔でそう言いながら立ってみたが、足がフラフラしていて格好つかない自分に情けなくなる。


それでも、飛翔くんと香織に笑顔を見せながら席を立ちトイレへと向かう途中に、涙が溢れ出した。


なにやってるんだろう……



この世に人を好きになるという気持ちさえなければ、こんなに苦しい思いをしなくてすんだのに


違う……



飛翔くんに出逢わなければ、あたしはこんな気持ちを抱えることなんてなかった。



できることなら、戻りたい。


飛翔くんを愛してしまう前に……



トイレにたどり着くと、大きな鏡に映っている自分に大きなため息が出た。



「なに、この顔……」



自分がこんな表情を隠しもっていたことも知らなかった。



あたしの中でどんどん大きくなって行った飛翔くん……



でも、もう分かっていることは一つ



あたし達は終わらせなければいけない。



これ以上、飛翔くんを苦しめないためにもこれ以上の傷を負わせないためにも……





トイレに行くなんてのは口実で、あの雰囲気から少し離れたくて逃げてしまった。



あたしは飛翔くんに嫌いになって貰えばいい



鏡に映る自分を見ながら、そう決心し、重い足取りで二人のいる席へと向かった。