思えば、あたし達……


何度も何度も、こういう空気を嫌ってほど感じてきたね。


幸せな時間の中でいつも付き纏っていた不安というものに、押しつぶされそうになりながら


何度も揉めたっけ……


苦しみや、寂しさをストレートにぶつけてくる飛翔くんを見てあたしはできる限り全てを受け止めようとしていた。



だけど、そんなこと飛翔くんは望んではいなかったんだよね。



きっと確信のできるものを欲しがっていたんだ



『未来のない恋愛なんていらないんだ』


そうメールでやり取りしたあの言葉が全てだったんだ……



そしてあたしは、愛した人をこんな形で傷つけた。


何よりも目の前にいる俯いている飛翔くんが全てを物語っている。



あたしは、こんな姿にしてしまうために傍にいたはずじゃない



じっと見つめていると、ふと顔を上げた飛翔くんと目が合い咄嗟に笑ってみせる。



ちゃんと笑えているのかなんて分からない



だけど、今は嘘くさい笑顔でもこうするしかない、あたしが悲しい顔をしたってしょうがない。



目が合ったと思えば、それはどちらから反らしたのか分からないほど一瞬で、一言も言葉を交わすことなく時間だけが過ぎていく……




「なにか話した?」


その言葉で顔をあげると、あたし達のために時間を潰してきてくれていた香織が立ちあたし達を見降ろしていた。


「話してない……」


その言葉に香織の表情がまた雲っていく……



ため息を吐き出すと、あたしの横に再び腰を下ろし「なにがしたいの?どうしたいの?」とその言葉は飛翔くんの方へ放たれた。



「どうしたらいいのかも、わっかんね~んだよ!!!」


「はっ?なに?じゃあ、なんで来たの?好きだからきたんじゃないの?やり直したいって思ったから来たんじゃないの?」



「………」



あたしは二人のやり取りをまるで他人事のように聞いていた。


そして、香織に突っかかっている飛翔くんをただ見つめながら……



きっと、もうあたし達は限界なのだと。