目の前にいるのは紛れもなく飛翔くんなのに、胸の痛みがなくならない。
いつもは逢えた瞬間に不安も悲しみもなくなっていたのに……
「流奈?」
「んっ?」
あたしを見つめる瞳はどこか悲しげで、それを振り払うようにおもいきり笑って見せた。
「中で話そう」
「うん」
立ち上がった飛翔くんを見てから、あたしも店内へと足を動かした。
今になって香織と飛翔くんを会わして平気なのだろうか?なんて今さらな考えが浮かんでくる
そんなことを思いながらも、あっという間にあたし達が座っていた席に着くと
「どーも」という香織に飛翔くんまでもが「ど~も」と言いながら、あたし達の向い側に腰を下ろした。
「香織だよ」と伝えると、頷いている。
いつも大半を一緒に過ごしている香織のことはよく話に出していたから、きっと分かっているだろう。
その言葉を最後に、あたし達の間には無言という冷たい空気に包まれた。
そして時間だけが過ぎていく……



