「どうしたの?遅いからさ……」


「ごめんね、またメール入れちゃった」


「返ってきたの?」


「ん、まだ……」



その言葉に、少し顔をしかめながらため息をつくと「なに飲む?」とメニューを差し出してくれた。


「生でいい」


「じゃぁ、あたしも」


そういうと、タイミング良くで店員さんが来て「生2つ!」と注文してくれた。


「なんか食べたの?」


「なんも」


むしろ、今日は朝から何も口にしてないと言おうとしたが怒られるだろうと言うのはやめた。



適当に注文してくれている香織の目の前に座るあたしは、携帯から視線を反らせないでいた。



「で、何で別れたの?」


「だってね……」



思い出すだけで、苦しくなる……


これを言葉にしなきゃいけないことはかなりの勇気が必要だ。



ゆっくりと初めから話すあたしを見つめながら、相槌を打ちながら最後まで聞いてくれる香織……



そして、また飛翔くんが本当にいなくなってしまった現実に涙がたまっているのが視界のぼんやりさで分かる。



「つーかさ、初めからそうゆうの覚悟で付き合ってたんでしょ?」


「んっ?」



「だから簡単には一緒になれないってことだよ」


覚悟……?



その言葉に、黙っていると「お待たせしました生2つです」と元気よく割り込んできた店員さんからビールを受取りそれを流しこんだ。