「ちょっと、トイレ行ってくるね」


定員に席を案内されたあと、バッグだけを残してあたしはトイレへと向かった。


鏡に映る自分がまるで別人のようで、何かに取りつかれているような顔つき


今日が、日曜日で店が休みで本当に良かったと思いながら、ポケットから携帯を取り出し広げるとメールマークがついていた。


ーーーっ!!!


そのメールが飛翔くんからのものだと確信などないくせに、あの日の夜からはあたしは何処かで期待しながら開いてしまう自分がいる。


そして、違う人からのメールに決まって肩を落とすんだ……



「……なわけないか」


《伊織ちゃん、何してるの?暇だったら飲みにでも行かない?》



やはりそれはお客さんからのもので、あたしは返信すらせずに毎日のようにずっと開き続けていた1つのフォルダーを開いた。


☆☆飛翔くん☆☆


特別に隔離されていた、大好きな愛しい人の名前。



まるで、それはもう役目がないかのように寂しく目に映る。




《家にいるの辛くて外に出てきちゃった》



白い画面にゆっくりと並べていく文字……


心配性の飛翔くん、まだ好きでいてくれるならきっと……



最後の賭けをするかのように、あたしは大きく深呼吸をすると送信ボタンを押した。



未練がましい女だってかまわない



うざってぇ~と思ってくれたってかまわない



それでも、あたしの溢れ出している想いはこうする他ない。



携帯を閉じると、持っていた小さなタオルを水で濡らし泣きはらした目にそっと当てた。