目を閉じれば、走馬灯のようにが浮かんでくる。
あたしの帰りを
座りながら待っていた飛翔くん
抱きしめてくれている時の
照れくさそうな飛翔くん
不機嫌そうな顔をしながら
嫉妬している飛翔くん
鮮明に思い出される……
だけど、そっと目を開けるとそこには飛翔くんはいなくて
寂しそうに1台の車だけがこの場所に止まっているだけ。
行こう……
ここにいたら、あたしはずっと待ち続けてしまうだろう。
今踏み出さなきゃ、本当に戻れなくなってしまう
車まで、重くなってしまった足を引きずり
すっかり冷えてしまった自分の体を撫でると運転席のドアを開け後ろを振り返った。
『じゃあな!!着いたらメールくれよ!!』
そういつもみたいに、聞こえてくる気がして……
アスファルトに視線をおとせば、あたしの涙がおちていく……
それを袖でおもいきり拭き車に乗り込むとと目に少しだけヒリヒリとした痛みを感じた。
あたしの体同様、冷え切った車内は皮肉にもあたしに寂しさを与える
唇を噛みしめると、もう泣いてはいけないと自分にいいきかせながらアクセルをふんだ。
いつもと同じ景色が過ぎ去っているはずなのに、
全ての色がくすんでる気がするのはきのせいなのか……
家の駐車場が近づくにつれて、あたしの顔つきは引き締まっていく。
日付がかわってしまっている今日は日曜日
明日が休みな旦那は起きているに違いない
こんなにも遅くなってしまったことに、どうやって言い訳をしようとか、もうそんなことはどうでもいい。
ただ、純粋に泣ける場所を確保したいだけ
この涙を止めることができるとは思えない
そして、この涙を全て流しきった時
あたしは飛翔くんを愛していた記憶が消えてなくなることを願うだろう……。



