無償にも時間がどんどん過ぎていく
1秒、1秒過ぎていく度にそれはまるで終わりというもののカウントダウンのように感じた。
「愛想つかしたよね」
飛翔くんはあたしなんかじゃんなくたって、これからたくさん幸せになれる。
普通の恋をして
普通の人を好きになって
幸せになるんだ
そこにきっと、あたしはいない。
「つばさくんっ……」
少しだけ期待していた。
こうして、ここにいることをメールで残せば、必ず来てくれることを……
腕時計を見ると、3時まであと2分。
「3時まで待つんだ……」
自分の車の陰に隠れるように腰をおろしていたあたしの足元には、
いつの間にか沢山のタバコの吸い殻がたまっていっている。
「吸いすぎってまた、怒られるな」
どうしてなのだろう
こんなに悲しい状況に陥っているのに、浮かんでくるのは楽しかったころばかり。
そういう心理になっているものだろうか。
そっと、足元を見つめるあたしにミサンガが目に入る。
そう、一所懸命あたしが編んだもの
飛翔くんの足とあたしの足を隣に並べれば、ハートの形になる
そんな話を一度だけ行ったホテルで話したら、飛翔くんは声をあげて喜んでいたっけ
『重ならない時こそ相手を思えるんだよ』
そんな風に思って、あの時自然とそんなことを口走ったが今思えば二人いなきゃハートにはならない。
「重ならなきゃ意味ないのに……」
編み込んだミサンガを手で触れると、3時を知らせる文字が目に入る。
静かに腰をあげると、目を閉じた。



