飛翔くんはいつもどんな気持ちでここにいたんだろう
あたしが仕事に行く時も、バックミラーを確認すると少し肩を落としながらも笑顔で手を振ってくれた
あたしが店を終えて連絡すれば、いつも先にここで待っていて
車から降りたあたしをそっと抱きしめてくれた
帰る時は、あたしが先に車に乗り込みこの場所から先にはなれていく、それを追いながら帰っていく飛翔くん。
思えば、どれもあたしは幸せな気持ちのまま店に行って
店から帰ってきていた。
帰る時も逢えた喜びでいっぱいで
だけどきっと飛翔くんは違ったんだね
独りこの場所にいて、初めて分かったその気持ち。
「ごめんね……」
きっと、飛翔くんはあたしより不安だったんだ
『流奈がいなくなることに脅えているんだ』そう、悲しそうな今にも涙しそうな瞳であたしを見つめながら言っていた。
あたしは、気付かなかった
それなのに……
未来を描いて、あたしが傍にいることを夢見ていた飛翔くんに衝撃な一言を言ってしまったんだ。
もう、あんなメールを送ったからってここには来てくれないだろう。
怖かった……
幸せな時間を過ごしていたこの場所で独りいることが
あたしは自ら幸せを手放したんだ……
空を見上げれば、今にも泣きだしてしまいそうな雲があたしを見降ろしている
そして、これ以上涙が零れないようにと、あたしは上を見続けた。
本当に、終わってしまったんだ
もう二度と、ここで飛翔くんに抱き締めてもらうこともないのだろう
あの温もりを感じることも……
あの笑顔を見ることも……



