店長の言葉に甘えさせてもらいながら、1時半で店をあがったあたしは更衣室に着いた瞬間に足の力が抜けてその場に座り込んだ。


限界だった


いつも一緒にいる時にいつも流れていたアーティストの曲がカラオケで歌われる度に


飛翔くんが初めて座っていた席に若い男の子が座っていると重ね合わしたり





一生懸命に仕事に集中しようとしてはみるものの、


そんなものは飛翔くんという存在であっという間に塗り替えられていく。



今日、お客さんと話した会話も何ひとつ覚えていない



こんなこと今までなかったのに……



今にでも泣き出してしまいそうな自分を振り切るかのように立ち上がってロッカーを開けると、


奥にしまってある白いドレスが視界に飛び込んできた。




それを手に取った瞬間に、あたしの涙はもう止まることなく流れ始めた



「つばさくん……」



あの日、初めてこの店に来た時にあたしはこのドレスをきていた



そんなあたしの姿を見ながら『白好きなの?』なんて聞いてきた。



目の前にいた飛翔くんがあまりにも白をイメージする男だったから思わず『白になりたいの!!』なんて言い返したっけ……




あたしの言葉で爆笑していた飛翔くんの笑顔にあの時、何かが浄化されるような気がした。



あの日以来、来ていない白のドレス……



それを握り抱えると、あの時の会話が鮮明に思い出される。



あの笑顔はもう、あたしには向けられることはない



いつの間にかあたしは、そのドレスを抱きしめながら泣いていた



その涙が白いドレスに模様を作っていく……


「逢いたい……」



きっと、あなたのいなくなってしなう世界ほど



あたしは怖いものはないのだろう……。