こんな形で出逢ったりしなければ、
あの時、ホテルから出ないで一緒に朝を迎えることも
飛翔くんがこうしてフィルムを貼ることも
周りを気にせずに外の風を感じることもできたのに
こんなにも、飛翔くんを苦しめずにいられたのに……
「ごめんね、こんな事で気をつかわせちゃって……」
自然と口から言葉が漏れた
「ば〜か!なに言ってんだよ!!俺はそんな事……」
「普通の恋人同士なら、こんな事ないのにね」
自分が言うなんて、最低だと思った。
巻き込んでしまっているのは自分なのに……
だけど、窓から感じてる風は飛翔くんと出逢った頃よりも冷たく
何もかも寂しく感じてしまう
「流奈!!いい加減にしろよ」
「ごめん……」
あまりにも強い言い方に飛翔くんの方を見つめると運転に集中しているようで振り向いてもくれなかった。
そんなつもりじゃなかった
でも、これが現実でそれからは逃げられない。
重い空気の中、飛翔くんは口を開こうとしない
「怒ってる?」
「別に……」
「怒ってるじゃんよ」
「愛してる」
「へっ!?」
「俺は流奈だから愛してる」
愛してる……
そう、本当はそれだけで十分だったはずなのに
あたしは……
「飛翔くんのバカっ!!」
「うるせー!流奈の前くらい素直でいなかったら俺は爆発しちまうよ」
「流奈っ……」
飛翔くんの唇にそっとキスをした
そして、あたしは窓を閉めて微笑んだ。



