いつもの秘密の場所に戻っている車の中で、飛翔くんはクーラーをきり窓を全開にしていた。
あたしは、真っ黒に見える世界じゃなくて
こうして窓が全開にされて見る景色のが好きだ。
飛翔くんの隣にいて、こうしてちゃんと色づいた景色を見ると一瞬だけ錯覚を起こすんだ
フィルムで真っ黒に見えるのは、もちろん飛翔くんの気遣いで凄く嬉しかったけど
でも、色のない世界は本当にあたしたちの形を表すようで好きになれない
錯覚だっていい
飛翔くんとこうして普通の恋人同士のようにドライブしているような感覚を味わってられるから
「あ、ごめん」
飛翔くんはそう言ってはいきなり窓を閉めた。
誤った理由も悲しいけどすぐに分かってしまう
「えっ?いいよ、開けて?」
「大丈夫だよ!流奈寒いかと思ってクーラーきっただけなんだけど丸見えだな」
笑いかけてくれたのに笑い返すことなんて出来なくて真っ黒になってしまった窓を見つめていた。
手を伸ばし、窓を開けた。
そのあたしの行動にびっくりした顔をしてあたしを見つめている
「閉めないで?お願い…」
「でもよ……」
「いいのっ!今ぐらい普通の恋人同士みたいにいたいから…」
「流奈……」
その悲しそうな飛翔くんの声も、今ならこの風が吹き飛ばしてくれる気がしてあたしは窓から少し顔を出し目をつぶった。



