二人揃って時計を見ては、何も言わずに着替え始めていた。



さっきまで体全体で感じていた温度は、もうそこにはなくて



飛翔くんの姿を視界に入れてしまえば「帰りたくない」と今にも言ってしまいそうで、自然と背を向けて、着替えていた。



「なぁ……って」


「えっ?」


「呼んでるだろ?」そう言ってはいきなり後ろから抱き締められてブラジャーのホックをかけ終わったあたしはビクンと体が反応していた。


「ごめん……」


「今は何も考えないで……」


「うん」


その言葉があたしに、現実を見ろと言っているように聞こえる


ドアを見つめていた



このドアを開けてしまえば、あたし達はまた離れることに恐れて


だんだん迫ってくる時間に脅えながら帰らなきゃいけない。


ほんの何時間と何も変わらないドアなのに


時間というものは、変わらない物さえも変えてしまう。



「つー流奈これヒドイぞ……」


「何が?」


その笑い声に後ろを振り返るとの飛翔くんの手がブラジャーにかかる。


「お前、よくこんなんで気持ち悪くねぇ~な?めちゃくちゃ捻じれてんじゃん」



飛翔くんの手によって外されたフォック……



それと同時に胸が凄い早さで動き始める。



「あ、ありがとう」


その瞬間、後ろから力いっぱい抱きしめられた。


苦しくて、痛いくらいに……



「苦しいよぉ…」



その声も、もはや届いていない。


増して力が強くなる一方で……



「飛翔くん……?」



小さく呟くと、そっと体が離れた。




「よし!行くか」


あたしに、上着を頭の上からかぶせると「早く着替えろ♪」と優しい瞳であたしを見ながら立ち上がっていた。