この日、あたしは飛翔くんに抱かれた
飛翔くんの手はふるえていて
だけどあたしに触れる大きな手からは愛を感じられた。
「旦那とSEXしないでくれ……」
「他の男に体を触れさせないでくれ」
きつく抱きしめられながらそう言った飛翔くんの体はとても小さく感じて、あたしは零れそうな涙を抑えるのに必死だった。
幸せな空間にいるあたしたち
誰の目も気にせず、こうして二人でいることができるのに
なのに、そんな空間でもあたし達に襲ってくるのは不安や苦しみだけ。
どれだけ苦しめば、笑い合えるのだろう
それだけ不安を抱えれば解放されるのだろう。
飛翔くんの体が小刻みにふるえてるのを感じてはそんなことばかり感じていて
あたし達はその不安や悲しみを分けあうどころか重ねあうように抱き合っていた。
「俺、お前が離れていくことだけが怖いんだ」
裸のままあたしを抱く飛翔くんの体はとても冷たくて、いつもの温度が感じられなくて……
それがまたあたしを悲しみにおとした。
「ずっと、ずっと好きでいるよ」
「嘘だよ、いつか俺の傍から離れて、いつか忘れちゃうんだよ」
「ずっと好きでいる」
その言葉に飛翔くんの険しい顔が、笑顔に変わった。
飛翔くんが不安なら、その不安をあたしが取り除いてあげたい。
飛翔くんが悲しむのなら、その悲しみをあたしが抱えたい。
飛翔くん泣くのなら、その涙はあたしが拭いてあげる。
飛翔くんが笑ってくれるのなら、
あたしは沢山の幸せを運び続けるんだ
この愛と共に、ずっと……
たとえ離れたとしても……。



