「流奈はなにを言おうとしたの?」



「ううん、なんでもない!!」



「そんな事ねーだろ?なんだよ!!」



「なんでもないのっ!!」


そう言ったが、その後も何度も飛翔くんは聞いてきていた。


もう戻れなくなってしまうかもしれない……


そう、言ってしまいそうになった



飛翔くんの温度を体中で感じてしまったら、あたしは戻れない場所まで行きそうで怖かった。



だけど、そんな想いはきっと同じだったのかもしれないね



ホテル街に近付くに連れて、飛翔くんはあたしの手を強く握りながら落着きがなかった


不安をぶつけ合うかのように、あたしも強く手を握りかえした。




「着いたぞ!」


「うん」



そう、着いてしまった


深い深い奈落の底……


もう戻ることのできない場所まで……。



先に車を降りて歩く飛翔くんを小走りで追いかけ、「一度でいいから、こうやって歩いてみたかったの♪」そうおもいきりしがみ着きながら飛翔くんの腕に自分の腕を絡ませた。


「バカ!!可愛いんだよ!」



涙が溢れそうだった


普通に腕を絡ませ歩いてるカップルを見て、いつもあたしの心は痛んでいた


普通のことさえできないのは、あたしがしていることは罪深いことだからだろう。


だけど、今日だけは……


そう思いながら短い距離を離れずにしがみついていた。