「えっ……!?あ、あっちぃー!!!」
あの日以来、あたし達はきっとお互いに傷に触れることをさけていた。
《俺がもし、旦那と別れてって言ったらどうする…?》
そう飛翔くんの心の中にずっと留めておいたものが吐き出されたあの夜。
まるで何もなかったかのように、いつものようにこうして二人秘密の場所でその傷を自分なりに拭おうとしている。
「危ないから~!!ハハハハッ!!」こうして、幸せな時間を過ごすために……
「それ、ほんとに?」
あたしの突然言い放った言葉に飛翔くんは、加えていたタバコをズボンに落とし慌てていた。
「うんっ!!」
あの日……あたしは考えたんだ。
今、飛翔くんの傍で出来ることは1つずつ、幸せを運んであげること。
それが小さな幸せだとするなら、自分で膨らまして大きな幸せに変え運んであげたい…
「出発進行~!!」
ーーパーン!!!ーー
「だから、近所迷惑だっつーの!!」
助手席から手を伸ばしクラクチョンを鳴らすと、慌てながら呆れた顔をしたが、それが笑顔に変わるのは早かった。
そう、今日は最初から店がお休み
旦那には仕事と嘘をついて
飛翔くんには店だと思わせておいて、時間ばかりを気にしている飛翔くんをいつもとは違う気持ちで見つめていた。
「今日は店行かないよ」
そう言った時の慌てぶりの飛翔くんを思い出すだけで、顔がはにかんでしまう。
そして、この助手席に座り続けることができることが嬉しくてたまらない
飛翔くんが隣にいて見る景色は、いつもと違って見えるんだ
隣を見ると、運転をしている真剣な顔つきの横顔
それがまた、たまらなくて
あたしは子供のように足をばたつかせていた。



