《なにかあったの?》
《なんもねーよ!!》
《そっか、ならいいんだけど……》
結局、飛翔くんがいつもの方向を避けた理由なんて聞けなかった。
携帯を握りしめながら、肩をおとした。
もう限界なのかもしれない
あたし達がこうして逢うことも、このままの関係を続けることも
結局は飛翔くんを苦しませ、傷つけるだけ……
ソファーに顔をうずめながら唯一繋がれる携帯を強く握りしめていた。
手の中で携帯が小刻みに震える、そして黄色いホタルがあたしに飛翔くんからのメッセージを運んでくれる。
《ねぇ?ひとつ聞いていい?》
《うん、なぁに?》
すぐに受信されたのを確認して、あたしはメールを開いた。
《俺がもし、旦那と別れてって言ったらどうする…?》
………っ!!!
その文字をただ見つめながら、あたしの手は動くことはなかった。
今まできっと、お互いが避けて触れないようにしていたこと。
飛翔くんが何よりも聞きたかった言葉なのかもしれないのに……
そう、あたし達を縛りつけているもの。
初めから最後まで、逃げられないもの……
それに触れずにきたあたしは、
やっぱり酷い女なのかもしれない。



