無言が続く車内…
飛翔くんの吐き出すタバコの煙がなぜだか長い溜息のように感じる。
「しかし、なんで車置き去り?」
思い出したかのように、あたしのコンビニに止まっている車を見ながら、笑いだしていた。
でも、笑ってなんかいない。
あたしは、飛翔くんの下手くそな嘘笑いなんて簡単に見分けることができるよ。
「ウケルでしょ?」
「やっぱり、流奈はアホだ……」
あたしの車に横付けされた飛翔くんの車、それと共にガチャっと鍵が開けられた
「ありがとうね」
「おお」
その日はいつものように、あたしを抱きしめてくれることも、キスしてくれることもなくて
静かに下りながら、顔を見つめることが出来ずにドアを閉めた。
またね……
そう一人心の中で呟きながら、あたしは自分の車に乗り込んだ。
この音楽……
切なくて、悲しい曲……
いつもバイバイしてから、この曲が流れていても何とも思わずに口ずさんでいたが、
なぜか、今日ばかりは早送りをした。
隣にある飛翔くんの車を見てみたが、フィルムのせいで顔なんて見えない
今、飛翔くんはどんな顔をしているの?
それでも、その姿が見れなくて良かったと思うのは、あたしの強く踏んだアクセルが物語っている。
あたしはハザードを出し、ウインカーを右に出した。
そして、いつもみたいにバックミラーで後ろから着いてくる飛翔くんを見ながら帰るんだ。



