「すいません、トイレ貸して下さい」
コンビニに入るなりそう言うと、店員さんは笑顔でにこっと笑った。
店の帰りに、いつも寄るこのコンビニ……
店員さんとももう、顔見知りだった。
トイレの鏡に映る自分の顔をあまりにも酷くて目を反らした。
赤く腫れている目、化粧だっておちている。
やつれてさえ見えるこの顔……
病気の時でさえ、こんなやつれ方をしないのに
びっくりした反面、どんどん出てくる未知の気持ちや表情に脅えてたりもした。
トイレから出ると、お茶を手に取りレジに行くと「タバコは?」と店員さんが聞いてきてくれた。
あ、そうだ……
タバコを買いにきたんだったっけ……
「いります」
「いつものね?」
「はい」
そう言うと、お財布から千円札を一枚取り出した。
「疲れてるでしょ?あまり無理しないようにね」
「えっ?」
そう言い返すと、店員さんは笑顔でかわした。
きっとこの店員さんもあたしが水商売していることくらいお見通しだろう。
この店員さんから見ればにはあたしはただの客……
だけど、そんなささいな一言があたしに少しだけ元気をくれた。
あたし今、店でも誰かそんな風に思わせる接客なんて出来ていないだろう
自分の中で飛翔くんの存在が大きくなるにつれて、あたしの中で何かが変わっていってしまっている。
「ありがとうございます」そう言いながら、コンビニから出ようとしている時に
あたしの視線は雑誌コーナーの前のガラスへと移っていた。
そう、あたし達はこのコンビニから始まっていたんだ……
そう思いながら外に出ると、まばらながらにも通り過ぎていく車を目で追っていた。