「飛翔くん、立って……」
地面の上に力なく座りこんでいた飛翔くん
最後にこんなに重い荷物をごめんね……
そう心に呟きながら笑顔で手を差し伸べた。
涙を拭いながら、あたしの手を握り
「流奈、ごめんな……」そう言いながら立ちあがりあたしをおもいっきり抱きしめた。
あったかい……
このぬくもりをたくさん感じて残しておこう……
「なんで飛翔くんが謝るの…?」
「じゃ、今の取り消しな!」
「なんだ?それ……」
久々にあたし達は笑い合った。
この笑顔を胸の中に焼き付けておこう……
「同情なんていらないからね!」
「分かってる」
そう言いながら、長いキスをした。
この場所で、あたし達は始まったんだよね。
喧嘩した時もあったし
不安に脅え、抱きしめ合った夜もあった。
そして、きっともう
この場所でこうして逢うことはなくなるのだろう
「そろそろ、行こうかな……」
「本当ごめん、もうやばいよな?時間……」
「うん、大丈夫」
いつもはメールで一緒に迎えている朝を、今日はこうして二人、
一緒に迎えることができただけで幸せを感じた。
たとえ、これが最後の幸せだとしても、もうそれだけで十分だった。
「じゃあね」
「おう、後でまたメールする♪」
その言葉に頷くこともなく、
あたしは車に乗り込み走り出したと同時に涙した。



