いつも車を止めている場所から少し離れた場所に止めると、あたしは静かに下りて飛翔くんがいるであろう二人の場所に静かに歩いていった。


「……っ!!!!」


飛翔くんの姿を見るなり、あたしはまた涙が溢れだし、手を口元に添えた。



そこには、力が抜け肩を落とし座り込んでいる飛翔くんがいる……


ずぶぬれになりながら……。


目の前にいる愛しい人をこんな哀れな姿にしてしまっているのは間違いなく自分なのだ。


静かに近づくと、後ろからおもいっきり抱きしめた。


ひんやりとして冷たくなっている体を感じると、あたしの胸はいっそう痛みを増した。


力の入っていない飛翔くんの体はあたしに預けている。


「本当にバカ……」


耳元で小さく呟くと「るな……」と雨の音で消されてしまいそうな声であたしに顔を見せてくれた。


力の抜けている飛翔くんは、あたしを抱きしめ返そうともしない。


「幻覚か?とうとう俺、いっちゃったか」


笑っているのであろうか、ひきつり今まで見たことのないような表情であたしを覗き込んでいる。


「流奈だよな?なんでここにいるの?」



もう言葉にならなかった。


こんなにも、悲しみで力のない飛翔くんを強く抱きながらあたしは泣き崩れた。



「飛翔くん、ごめんね……」



その言葉に飛翔くんは、あたしに笑ってみせた。