もう、大好きな夏がだんだんと終りを知らせているようだ。


雨の中、服が濡れているせいか、とても肌寒い



少し前までは、突然降りだす雨に険悪感を感じていたが、火照っている体にはそれがとても心地よく感じていたのに。



一向に止みそうにもない雨は、あたしの心の中さえ曇らせていく



飛翔くんは何をしているのだろうか……


また、色々苦しめていることには間違いない。


『俺、流奈の全てを知りたい』


真剣な眼差しであたしを見つめながらそう言った飛翔くん……


彼にあたしの過去をぶつけてしまうのは重たすぎる……。



こんな場所に一人雨に打たれていても考えているのは、飛翔くんのことばかりで、


あたしの頭の中はそれ以外のものを全く受け付けないようになっているのだろうか。




出来ることなら、飛翔くんとの記憶を全て消したいと思ってしまう自分もいる。



あたしがあたしでなくなってしまっているのだから……


チクチクと痛む胸に手を置き、深呼吸すると、腕時計に目をやった


いつもは家に帰っている時間を遥かに過ぎている



「帰らなきゃ……」


こんな時にだって、あたしの帰る場所は飛翔くんの所ではない。



重い腰を上げると、あまりにも濡れている服が気になったが、もうそんなのはどうでも良くて。


あたしは車に乗り、エンジンをかけた。