「だから?だから何?俺が好きなのは流奈だよ?紛れも無く目の前にいる流奈……」



「違うの……」



「何がだよ!!俺が愛してるるのは目の前にいる流奈なんだよ!!」




「ダメだよ……流奈じゃダメなんだよ」




「意味がわからねぇ、ちゃんと話してくれなきゃわからねぇーよ!!」



飛翔くんが好きなのは、偽物のあたし……


本物のあたしを知ったら離れていくんだ……


気がついたら、あたしは飛翔くんの車から降りて自分の車のカギを開けていた。



「待てよ!流奈!!」



「いたいっ……」


あたしの腕を力強く引っ張った飛翔くんは、とても悲しい目をしていた。



「どうしちゃったんだよ……」



いつの間に雨が降っていたのだろう


空を見上げると、冷たい雨があたし達をあっという間に濡らした……



「濡れちゃうよ……」



そう、頬笑みながら飛翔くんの顔を見つめると


飛翔くんはあたしを見つめていた。



とても、冷めた目をして……


雨で涙なんて分からないはずなのに


綺麗な涙が頬をつたっていた。



それでも、あたしを掴む手の力は強くて


あたしは、もう片方の手で飛翔くんの手をはなした。



おもいきり笑いながら……


そして車の中にいつも入っている予備の傘1本を開き飛翔くんに握らせた。