離れたくない……



感情が高まったまま携帯で店の名前をメモリーから捜し出せば、あたしはそのまま通話ボタンを押した。



「もしもし伊織です」


「あ、どうしたの?」


「あの、店長います?」


「うん、ちょっと待ってね」


保留音が鳴っている間、なぜだか変にドキドキしながらも、店長が電話にでるのを待っていた。


それは、これからしてしまおうとしていることにか、

店長への嘘になのか分からず、ドキドキしている胸を押さえると深呼吸をする。



「はいはい、ごめんね、伊織、どうした?」


「今日、お休み貰いたいんですけど」


「なんかあったの?」


「ちょっと……」


「うん、いいよ、いつも頑張ってくれてるから」


「ありがとう」


「はい、じゃあな!!次の出勤の時に今日の分頼むぞ‼︎」




そう言われ、電話をきるとため息をついた。


仕事を休んでまで、飛翔くんの傍にいたいと思い、とうとう行動に出してしまった。




画面の明かりが消えると「ごめんなさい」と呟き閉じて車に乗り込んだ。



怖かった……



だんだん、今までつけていた仮面が少しずつ飛翔くんによって剥がされて行ってしまっていることに


全てを剥がされてしまった時……



きっと、あたしはもう、元に戻ることはできないだろう。



「ごめんね?」


「おう、どした?」


「ううん、なんでもないよ」


飛翔くんが、時計に目をやってる姿を見ながらも、


もう少しだけ店を休んでしまったことを言わないでおこうと、なぜだかもったいぶってる自分に笑えた。