《ねぇ?飛翔くん…なんでだろうね、初めのうちはさ少しでも一緒に居られたら…って思うのに人間って贅沢な生き物だよね?もっとを望むようになる》
携帯を抱え深く目を閉じた。
さっき何気なく言い放った千秋の言葉はあたしの胸にしっかり突き刺さっていた。
飛翔くんと逢うたびに、
飛翔くんが不安な顔をしている時に、もっと一緒にいれたら……なんて思う。
飛翔くんにおもいっきり抱きしめてもらっている時や
眠れない夜は、
ずっと一緒にいたいと願ってしまう。
《うん、だよな…でもよ?それが当たり前なんじゃないかな?本当に好きなら、そうゆ~気持ちって湧いてくるものだと思うんだよね》
《でも、流奈は今があればいい!幸せだから、先の事なんてどうでも》
だけど、求めてしまったら
欲をぶつけてしまったら簡単に壊れてしまいそうで
あたしと飛翔くんの未来をきっと繋げてはいけない。
《そうかな?俺は先の見えない恋愛なんて、そんなの恋愛なんかじゃないと思う。先のない恋愛は不安にさせるんだよ》
先の見えない恋愛……
好きなもの同士、未来を描くことはとても幸せなことで、誰もがずっと、一緒にいられたら……そう思う。
だけど、飛翔くんが言っていることはきっと綺麗事にすぎない。
先の見える恋愛などない……
あるなら、教えていて欲しい。
確かなものを……
強く握りしめた携帯はやがて画面が暗くなっていて、返信ボタンに置かれた親指は動こうとしなかった。



