口元は笑っているが、千秋の目はあたしに疑いをかけている。


駐車場に着き慣れた手つきで、


あたしの車に千秋が乗りこむとあたしは助手席に乗り込んだ。



エンジンをかけると同時にいつも一緒に聞いている音楽が流れ始める



「好きなんだよね」



そう小さく呟くと、千秋は運転に集中していて無言で


車の中を流れている音楽でかき消されてしまいそうなあたしの声は



きっと届いてなかったのだろうと思いながら過ぎ去る景色をただ見つめていた。




「知ってる」




千秋がその言葉を発するのに、


どれくらいの時間が経っていたのかなんて分らないくらいで「なにが?」そう思わず聞いてしまったあたしに千秋は笑い転げていた。






「流奈は本当におもしろいね、自分が言ったんでしょ?好きなんだよねって」


「うん……」



タイミングがいいのか悪いのか、


信号が赤で止まると千秋の視線があたしに向けられていることが分かり下を向いた。


「彼のことでしょ?いいと思うよ?いいじゃん、だって離婚したいとか考えているわけじゃないんでしょ?」


「えっ?あ、うん……」


「いいってこともないんだろうけど、彼と一緒になりたいとか言われたらまた話は別だけど」



千秋もあたしと同じで結婚している、旦那にも会ったこともあるし、あたしの事情も知っている。



今あたしが抱えてしまった気持ちは、けしていいことではないことは自分でもよく分かっているからこそ千秋に言うことが抵抗があった。




「好きになっちゃったんだからしょうがなくない?やめなって言われたらやめられるの?」



「……」



「でも気をつけなね?分かりやすいからさ、流奈……」



「分かりやすい?」


「なんか変だよ、最近の流奈っ、店でもね」


「分かった、ありがとう」



「でも、やわらかくなった気がするけどね」


そう優しそうに笑いながら


「恋のせいか♪」なんて言うと、青になった信号と共に車が発進した




いつも同様、コンビニに寄り買い物をすると結構な時間が経っていいたことに気付き千秋バイバイをするなり急いで家に入った。