「あはははっ~ウケるから、それ!!」


てっちゃんは、明日が休みのせいかいつもに増していい飲みっぷりで、大好きな赤ワインまで入れていた。


「だろ??それで俺さぁ、言ってやったんだよ!!ガツンとな」


「なんて??」


完璧に作り話だろうとは分かっている。


だけど、てっちゃんは、いつもこうやってあたしを笑わしてくれる。



「……ってね♪」


「まじ?もう…あはははっ、もうだめ、アホすぎる!!!」


あまりにも抑えきれない笑いに、お腹が痛い……


お腹を抱えている横で、てっちゃんは誇らしげにまたワインの入ったグラスを空けた。


ワインを注ごうと、顔をあげ、ボトルに手を伸ばし掴んだ瞬間に、あたしの手からそれは、するりと抜け下に落ちて行った。



「あっ!!!ごめんなさい!!!」




真っ赤なワインは零れおち、ボトルは割れてガラスの破片が散らばり、赤い色の液体が、てっちゃんのズボンに少しだけかかっている。



「いいよ~!!このくらい、気にしないで!!」


ボーイが持ってきてくれたタオルで、あたしはズボンを拭くと、ズボンのしみよりもっと気になることに目を向けた。




どうして……??



確かに、あれは……



テーブルを拭きながら、ゆっくりと視線を感じる方に目をやると真剣な顔をしている飛翔くんがあたしを見つめている。



あたしは、どんな表情を向けていたのだろうか、


すぐさま、笑って見せた?


それとも、怒りの表情を見せた?


びっくりした表情?


自分でも、もう何がなんだか分からずに、テーブルに視線をむりやり戻し、ひたすらタオルで零したところを拭いていた。