「行ってきます!!」


そう言うと、いつも同様振り返らず玄関を飛び出る。


あたしの足は車へと向かう。


少しでも振り返ってしまったら、どこかに無理やり押し込めている心の一部があたしを襲ってきそうで怖くて振り向けない。




車に乗るとエンジンをかけ履いていたパンプスを脱ぐと、バッグから取り出したものを足に巻きつける。



「これでよし!!」


自分の足を少し眺めると、顔が緩むのが分かり、そしてさっき考えていたものをふりきるかのように車を発進させた。




いつもの場所に着くと、飛翔くんの車はもう止まっていて、車の外に出てしゃがんでいた。



まただ……



その姿がバックミラーに映るだけで、あたしの心臓はすぐに反応し速いリズムを打ちだす。



「飛翔くん、はやぁーい!」


慌てて車を停め、外に出ると飛翔くんの隣に座った。


吸っていたタバコを地面に押し付けながらニコッと笑うと「だって俺、ずっとここにいるもん!」なんて口を少し尖らせながら言う飛翔くんを、


おもいっきり抱きしめたくなった自分がいて、勝手に顔が熱くなっていく……


「マジ゙……?」


「ひいた?」


「いや……」


「嘘だ!ひいたろ?今キモッ!って思ったろ?」




からかいながら、体を反らし距離を取ると、身を乗り出しながら焦っている飛翔くんがあまりにもおかしくて笑ってしまった。


「んな、こと……」



その瞬間、あたしは飛翔くんの胸に包まれた。