「ねぇ?」


「ん?」


「もっと早く出逢いたかった……」


ただただ、その言葉が口からこぼれた……


素直にそう思った。


こんなにも近くにいたのに、どうして今頃になって、あたし達は出逢ってしまったのだろうか。



「そしたら俺、話さねぇ~のによ~」と、あたしをおもいきり抱きしめた。


そっと飛翔くんの背中に腕を回しながら、あたしは小さくため息を吐いた。



そう、決してあたし達の関係は幸せなんかじゃない。


一緒に居られるこのひとときでさえも、ずっと着いてくる不安や苦しみ……


それは消えることはない。



飛翔くんが肩を震わせているのに気が付くと、あたしは目から零れそうなものを必死にこらえた。


そう……


あたし達は気づき始めていたんだ



お互いが贅沢になっていることを……



それが男と女であり人間だということを……。