二人の沈黙の空間で、止まることなく流れ続けている繰り返されるアーティストの曲。


「ねぇ?なんでこの人の曲が好きなの?」


頭をふる回転させて、話しかける言葉を探していたが、話題を変えることが1番だと思い、口を開いた。


「う…ん、なんて言うんだろうな心を鷲づかみにされるって感じがするんだ」


いつも車の中で流れているアーティストのCD。


「俺が、初めて流奈に出逢った時、店の中で歌っていたろ?」


「あたしが?」


「他の席でだけどな」


一瞬であの時を思い出してみたが、全然記憶にない。



流れている曲を少しだけ口ずさむと、飛翔くんの方を見て少しだけ口元を緩めた。



「でも、この歌は切ないね……」



「あぁ、半端じゃねーな」



「こんな風になったら、嫌だよ……」



別れの曲……


それが自分と飛翔くんを重ねてしまう。


もしも、あたし達に別れがきたとしたなら、あたしは、この曲のように飛翔くんとの幸せだった頃の日々を思い出しては


涙を流し続けるのだろう……。





「馬鹿だなぁ~ぜってーなんねぇ~から!!」



「本当?嫌だよ……」



「なんねーよ!!」


あたしの体を引き寄せ、ゆっくりと頭を撫でている


その飛翔くんの手が、暖かくて……


さっきまでの険しい顔をしていた飛翔くんが嘘みたいだった。