「待てよ!!流奈っ!!」


運転席のドアが開いたかと思えば、飛翔くんがおりてきて、あたしに近づいてきた。


「んっ?どした?」


「いや、あのさ……」


「なに?」


その時、秘密の場所から少し見える道にいたカップルはイチャイチャしながら、あたし達の存在に気が付き、少し距離を取り始めて歩いて行く……



「いや、ほら、抱きしめていい?って聞こうとしたんだけどさ、あ、でも良かったよ、ほら、人が通ったし……」


後ろを振り替えながら、少し恥ずかしそうに話し始めた飛翔くんを心から愛おしいと思えた瞬間だった。



「飛翔くん……」


自分から、飛翔くんの胸の中に飛びこむと「る、るなっ!!!」なんて焦りながらも、あたしをギュッと思い切り抱きしめてくれた。



背の高い飛翔くん


あたしの頭は大きな胸ら辺にあって、飛翔くんの胸の中にすっぽりと収まっている……




暫く長い時間、お互い言葉も交わさずに離れることをしなかった。



どちらかが言葉をかけてしまえば、その幸せな時間が終わってしまうことに脅えていたからだろう。



ただただ、そのままずっと……



あたしは飛翔くんの背中に回していた腕に力を入れた。