「人を好きになるって事、ずっと忘れていたの……」
見てはいないけど、今飛翔くんがどんな顔をしているのかなんて想像してしまっている。
「好きの意味も愛の意味も忘れてしまったの……」
それは、どこかに置いてきてしまったもの。
それからのあたしは、簡単に仮面をつけたりはずしたりできるようになってしまった。
「流奈……」
「好きになるって胸が苦しくなる?その人の事考えると辛くて、苦しく……」
「もういい!!もういいよ流奈……」
「だから今の気持ち大切にしたいの……たとえ、飛翔くんともう二度と逢えなくなってしまったとしても、あたしは飛翔くんを……」
「ばか……ばかだな、お前って奴は」
飛翔くんがとても悲しそうな顔をしているのに一生懸命笑顔を作っている。
それはきっとあたしのために
一生懸命笑ってる……
その笑顔を本物の笑顔にしてあげたい……
その、偽物の笑顔を包むかのように、あたしも微笑んだ。
「ばかだよ~だ」
これが許されない恋だとしても、
この気持ちは大切にしたい……。
好きの意味も、愛の意味も忘れてしまった
だけど、気付いたんだ
きっと……
好きにも愛にも意味なんてない
理由なんてものもない
それが、今ここに存在している確かな気持ちだと……



