「俺さ……」
「うん」
「前にも不倫してた」
「うん」
その声は、今にもかき消されそうで
でも、その言葉よりも飛翔くんの表情の方が何倍も痛く、あたしの心に突き刺さった。
誰にだって忘れられない過去がある
忘れてはいけない過去もある
それを体全体で表現しているのが、目の前にいる飛翔くんだ。
「7つ年上の人で、旦那もいた」
「うん」
「でも俺……割り切ってね!って言われたんだ、それで最終的には振られて旦那の元へ戻って行った」
「……うん」
「その時、俺は誓ったんだ。もう旦那がいる人は絶対に付き合ったり、好きにならないって……」
その言葉で、あたしは飛翔くんから咄嗟に目を反らした。
飛翔くんは不倫という関係で酷く傷ついていた……
その傷が今だに残っているから、こんなにも寂しそうな顔を
何かをよせつけないような鋭い冷めた目を……
さっき言い放った言葉たちを出来ることなら否定してしまいたかった。
〝結婚してても恋していい”
それは、確かに自分の中だけで納めておけばいいのだろう
だけど、それを相手にぶつけてしまったら
きっと傷をなめ合うだけの、悲しすぎる恋愛……



