「ごめんね」
飛翔くんが発する言葉に、もうこの空間で何回この言葉だけを言い続けていたのだろうか。
言葉は時には、本当に無力だ。
言葉に出来ない想いがある。
使いたい状況に適する言葉が見つからない時もある。
表現したい言葉が見つからない時は一体どうすればいいのだろう……
そして、こんなことを考えているどうかしてるあたしは、
どうしたらいいのだろう……
「今まで、こーゆー事した事ある?」
こーゆー事……
その言葉はきっと悲しいもの。
あたしが抱えてしまった想いも、
飛翔くんが抱えてしまった想いも、
きっと、いけないもの……?
「ないよ……でも」
「でもなに?」
「流奈は、結婚してても恋はしていいと思う。浮気とか不倫とかしていいって事じゃなくてだよ?そうじゃないけど……ずっと綺麗でいたい、女でいたいって思うのが本音、せっかく女として生まれてきたんだから」
何を言ってしまっているのであろう。
あたしが、恋を語れるほどの心なんて持ち合わせていないはずなのに、
恋を語れるほど、あたしは真剣に誰かに恋でもしたのだろうか……
それは遥か遠い昔で、そんな記憶も感情も久々だってのに……
「分からない事もないけど俺は怖いね、こうゆ~関係になるのが……」
それでも、久々に抱えてしまったこの恋は
きっと重なり合うことはない……
繋がることもない……



