横をちらりと見ると、夫はテレビに夢中になりながら、酒を楽しんでいる。私の視線に気付いたのか、グラスを持ったまま私の方に向いた。

そして彼は、またニヤっと笑ったのだ。

彼は、まだ何か言いたいことがあるらしい。しかし、それを口にしないところをみると、私自身で気付いてほしいと思っているのだろうか。

きっと、彼女の葬式で詳しい話を聞けば、また何か見落としていることに気付くかもしれない―

私はそんなふうに軽く考えていた。