「ねぇ、松田香苗って、ママの同級生じゃなかったっけ?」

ビールを飲みながら、夜の情報番組を見ていた夫がそう口にした。

「うん。高校時代のね。本名は真奈美だけど」

私は、酒の肴を夫に差し出しながら無表情でなずいた。

「…あんまり親しくなかったんだね。その感じだと」

「うん。嫌いだから。この人」

サラリと言う私に、夫はつまみを食べながら笑った。

「その割には、この人が出てたバラエティ、文句言いながらよく見てたじゃん」

「それは―」

私はそう言いかけて、黙った。

なんでだろうか。

「知ってる? "嫌い"って"好き"と似てるんだよ」

ビールグラスに口を付けながら、夫はそう言った。